4世紀続くシャサーニュの名門ピヨ一族

17世紀よりシャサーニュ・モンラッシェ村で、ブドウ栽培と木樽の製造を行っていたピヨ家。19世紀以降は樽製造をやめて、シャサーニュの丘でのブドウ栽培に注力しました。1858年にジャン・バプティスト・ピヨがシャサーニュ・モンラッシェにドメーヌ・ピヨを設立。その後二人の息子アルフォンスとアンリがそれぞれドメーヌを引き継ぎました。現在は名門ピヨ家の名を冠する3つのドメーヌが、シャサーニュ・モンラッシェ村を拠点として、それぞれ世界にその名を馳せています。
「ジャン・マルク・ピヨ」は、2代目アルフォンスの息子ジャンが設立した「ジャン・ピヨ・エ・フィス」の流れを組んでいます。1991年に4代目のジャン・マルクがドメーヌを引き継いだ際にドメーヌ名を現在の「ジャン・マルク・ピヨ」へと変更しました。当初はワインの販売先は少なく、大部分のブドウはネゴシアンへと販売していました。その後、少しづつドメーヌワインを増やしていき、1999年に自社元詰め100%となりました。2019年にジャン・マルクの息子アントナンが、他のメゾンやオーストラリアで多くの醸造経験を積んだ後にドメーヌへと戻りました。現在は5代目として、彼がすべての醸造を担っています。
減農薬農法から完全有機農法への転換

ドメーヌは現在13haの自社畑を所有しています。先祖から引き継いだ本拠地シャサーニュ・モンラッシェの畑以外にも、ピュリニィ・モンラッシェ、ムルソー、サントネイ等、コート・ド・ボーヌ南部に、異なるテロワールの畑を複数所有しています。
ブドウの平均樹齢は25~50年程。中でもシャサーニュ・モンラッシェの1級畑“クロ・サン・ジャン”には樹齢100年を超えるピノ・ノワールが植えられています。白で知られる村ですが、この区画は表土が浅い粘土石灰質でピノ・ノワールの栽培に適しており、良質な赤が造られています。ジャン・マルク・ピヨは赤の名手としても高い評価を得ています。
4代目ジャン・マルクの代より出来るだけ農薬の使用を減らすリュット・レゾネ農法を取り入れていました。しかし5代目アントナンは、エコロジーの観点からも農薬を使わない有機栽培が必要であると考え、2020年より、除草剤・殺虫剤・防腐剤・化学肥料等のすべての農薬の使用を中止し、完全有機栽培へと切り替えています。
気候変動に対応した柔軟な醸造

5代目アントナンは、ブドウ栽培以外にも積極的に改革を進めています。
2005年より白ワインの熟成は木樽で12ヶ月行っていましたが、2019年以降は上級キュヴェに関しては15ヶ月の木樽熟成に加えて、更に6ヶ月程ステンレスタンク熟成を行っています。長期にわたりゆっくりと熟成させる事で、各テロワールの個性の違いをより引き出せると考えるからです。また、近年の気候変動に合わせて、シャルドネは以前より早いタイミングで収穫しています。例えば2020年は8月21日に収穫を開始しました。過熟を避け、ブドウ果の各要素のバランスがベストの状態で収穫を行う事で、その土地に根差した純粋な味わいを、ワインに残す事が出来ます。
赤ワインはブドウ樹の仕立て方をコルドン・ロワイヤルに変更し、従来よりも収穫量を減らしています。また、収穫期には仔細にブドウ樹を観察し、糖度の上昇だけではなく、フェノール類が完熟するタイミングを待って収穫を行っています。
名門の伝統を引き継ぎながらも、品質向上への努力を惜しまない、新世代アントナンが造るワインに、更なる期待が寄せられています。