17世紀から続く老舗ブドウ農家


ドメーヌ・ロッシュは2009年にロマン・ロッシュ(Romain Roche)によって設立された若いドメーヌです。ロッシュ家は17世紀初頭から、コート・デュ・ローヌのケランヌでブドウを栽培してきました。この土地への思い入れは強く、ロマンの曽祖父ヴィクトラン(Victorin)はケランヌ協同組合の設立に尽力し、父マルセル(Marcel)は協同組合の会長も務めました。しかしマルセルの代までは、育てたブドウは全て協同組合に販売していました。
当主ロマンはボルドーとブルゴーニュの醸造学校でワインを学び、更にカリフォルニアのクロ・デュ・ヴァルやオーストラリアでも経験を積みました。フランスへ帰国後、父から畑を引き継いだ事をきっかけに、2009年にドメーヌを立ち上げました。当初は借りたカーヴでワインを造っていましたが、2015年にケランヌ村のはずれに現在のカーヴを新設しました。「自分でワインを造る様になりましたが、常に家族のモットーである『全てはブドウ畑から』という点を大切にしています。父は醸造の経験が全くないけれど、ケランヌの畑やテロワールを熟知しています。栽培についてアドヴァイスを貰いながら、この土地や自然を最大限に表現したワイン造りに取り組んでいます。」
2016年に誕生‼新AOP“ケランヌ”


以前までケランヌは村名記載の可能な“AOPコート・デュ・ローヌ・ヴィラージュ”でした。しかし2016年に独立したAOPとして認められ、“AOPケランヌ”が誕生しました。
以前からケランヌの生産者達は結束が強く、常に情報交換や協力をしながらワイン造りを行ってきました。新AOPが認可されるまでには、最初に書類を提出してから8年もの時間がかかりましたが、ケランヌの造り手達が一丸となって取り組んだ結果です。
ケランヌ村は暑く乾燥した地中海性気候で、日照時間に恵まれています。また“ミストラル”と呼ばれる、地中海に吹き降ろす南仏特有の強い北風の影響も受ける場所です。三つの異なるテロワールが存在していますが、ドメーヌ・ロッシュは主に村の中央部の“Montagne(山)” と呼ばれる標高の高い、石灰と泥灰土の南向き斜面地域と、南部の“Garrigues(ガリーグ)”と呼ばれる地域に畑を所有しています。 “Montagne(山)”は特にシラーに適しており、フレッシュでスパイス香が特徴のあるワインに仕上がります。一方“Garrigues(ガリーグ)”は砂利を含む赤色粘土の平地です。カリニャンやグルナッシュが植えられており、果実味が豊かで丸みのある、しなやかなワインが生まれます。
樹齢120年のカリニャン古樹


キュヴェ“ケランヌ・ラ・ブスケット・ルージュ”には、標高300mの畑で育つゴブレ仕立てのカリニャンが使われています。このカリニャンは1870年のフィロキセラ被害の直後に植えられた樹齢120年の古樹で、ケランヌ村で最も古いブドウ樹のひとつです。ロッシュ家が代々受け継いだこのカリニャンは地中深くまで根を下ろし、この土地のテロワールを率直にワインに表現しています。ケランヌの特徴を体現したワインです。
また、ロマンは2018年より白ワイン造りにも挑戦しています。今まで自社畑では赤系品種のみを栽培していましたが、2016年に一部の畑をマルサンヌ、クレレット、グルナッシュ・グリに改植しました。特にロマンが注目している品種はグルナッシュ・グリです。グルナッシュ・ブランよりもフレッシュさをワインに与える為、水不足や温暖化の影響を受けやすい今日において、注目すべき品種だと考えています。