注目を集める“高地”のブルゴーニュ

ドメーヌ・パトリック・ペストルは、ブルゴーニュの中心ボーヌの街より車で10分ほどの、ブーズ・レ・ボーヌ(Bouze-les-Beaune)村の造り手です。この村の周辺に広がるAOCオート・コート・ド・ボーヌは、ブルゴーニュの中でも現在世界的に注目を集めている産地の一つです。ブルゴーニュの主要AOCが地球温暖化の影響を受ける中で、このAOCは標高が高い丘の上にあり、畑が冷涼に保たれる為、近年より品質の高いブドウを手に入れる事が出来ています。
パトリック・ペストルは当主のパトリックが1992年に始めたドメーヌです。元は軍隊に所属し軍人として働いていましたが、その後ボーヌの農業学校で栽培と醸造を学びました。卒業後は10年ほど他のドメーヌで栽培・醸造を経験し、その後ブドウ畑をフェルマージュ(ぶどう畑の賃貸契約)として借り受け、自らワイン造りを始めました。やがて少しづつ畑を購入し、現在はオート・コート・ド・ボーヌを中心に15haを所有しています。バトリックのワインの多くは、地元を中心にフランス国内のレストランに出荷され、海外への輸出はほとんど行われていません。ブドウ畑の仕事で忙しく、時間が無いからとホームページも作成していませんが、実直にワイン造りに取り組む優良生産者として、人気があります。
ボーヌよりも-2℃冷涼な畑

ペストルのオート・コート・ド・ボーヌの畑は「Haut(=高い)」という言葉が表すように、標高350~450mの台地にあります。すぐ近くのAOCボマールの標高は250~330m程なので、比較すると、このAOCの標高の高さが分かります。標高の高さ故に、平地のボーヌの街よりも、平均気温が2℃以上も低くなります。以前は収穫が10月になる事も多く、それでもブドウの熟度が十分に上がらず、ややバランスに欠けたワインができる事もありましたが、近年の温暖化の影響で、ブドウはより理想的な熟度を得る事が出来るようになりました。また昼夜の気温差も大きく、良質の酸と熟度が両立したブドウが収穫出来ています。一方で驚異的な価格の高騰が続く有名AOCよりも取引価格は低く、コストパフォーマンスに優れたワインとしても、注目されています。
畑では以前より除草剤や除虫剤を一切使わない有機栽培を行っており、HVE認証でも最も上位のレベル4を取得しています。Bio認証もほぼ取得可能な状態であるものの、今までは申請を行う時間がなかったとの事。今後は畑仕事の合間を見て、少しづつBio認証を取得していく予定です。
のびやかな酸と素朴な旨味


パトリックが購入した畑には、以前からすでにブドウ樹が植えられていました。その為、多くがヴィエイユ・ヴィーニュと呼べる古樹です。樹齢70年以上の古樹を中心に、最も古いブドウ樹は樹齢110年を超すものもあります。
古樹のブドウ本来が持つバランスの良さと凝縮感を生かす為に、醸造はできるだけ手を加えません。収穫後のブドウは80%ほど除梗、20%は全房のままステンレスタンクで発酵。その後は木樽でゆっくりと熟成させます。パトリックが心がけているのは、常にフルーティで口当たりの良いワインに仕上げる事です。本来のブルゴーニュが持つのびやかな酸と、凝縮感がありながらも決して無理のない、身体に染みるような味わいを目指しています。
年々人気が高まっている産地ですが、パトリック自身は周囲の有名AOCの様な注目を浴びる事は望んでいません。今後も素朴な旨味を感じられる、自然なスタイルのブルゴーニュワインを造り続けて行きたいと考えています。