老舗を引き継いだ地元の4人組


1887年にコトー・デュ・レイヨンに定住したゴディノー家は、甘口とリキュールワイン専門の生産者として長年家族経営を続けてきました。1980年代後半にドメーヌの経営を引き継いだ4代目ジャン・パスカル・ゴディノーはさらに品質を向上させました。2004年のブリュッセル世界ワインコンクールでは、彼の造る“ボンヌゾー1996”が世界中から集まった309種類の甘口ワインの中から「世界最高甘口ワイン」を受賞。また2019年にはギッド・アシェット誌の「今年のワイン生産者」にも選ばれました。
2022年の始めに後継者がいないままジャン・パスカルが引退を決めました。所有する優良畑の購入希望者は次々と現れましたが、それではドメーヌは無くなってしまいます。そこで、この素晴らしいドメーヌをそのまま後世に残したいと考えた地元の仲間たち4人が一念発起し、共同経営という形でドメーヌを引き継ぎました。
泡・甘口・辛口「シュナン・ブラン」


以前はこのドメーヌのワインは、ほぼフランス国内で消費されていました。「世界最高の甘口ワインを世界の人に楽しんで欲しい!」と、ドメーヌを引き継いだ4人(エリック、エマニュエル、ルードヴィック、クリストフ)は輸出にも力を入れ始めています。また、クレマン・ド・ロワールと辛口ワインもリリースを開始しました。すべてのワインは、この地を代表するブドウ品種「シュナン・ブラン」のみで造られています。アルモリカン山塊の東側に位置しているこの地は、主に片岩・片麻岩・花崗岩で構成されており、穏やかな海洋性気候とこのテロワールは「シュナン・ブラン」の栽培に最適です。また「シュナン・ブラン」は水不足でも育ちやすく、温暖化が進む中で近年注目を集めています。
ドメーヌ・デ・プティ・カールは、26ヘクタールを所有。区画は複数に分かれていますが、いずれもトラクターで5分で行ける距離にあります。4代目ジャン・パスカルは古樹を好み、30~40年の間植え替えを一切行いませんでした。そのため樹齢100年を超す古樹も多く、現在、少しずつ植え替えも行っています。植え替え時は、同じ区画でマサルセレクションで選抜した苗木を使用することで、長年の間に培ったこの土地の記憶をブドウに残しています。
AOCボンヌゾー最良畑「クロ・デ・メレレス」


ドメーヌ・デ・プティ・カールはロワールの3大貴腐ワインのひとつ「ボンヌゾー」の最大所有者で、このAOCを代表する造り手です。貴腐ワインを造るためには、貴腐化して糖度の高いブドウが必要です。「パスリヤージュ」と呼ばれる伝統的手法で、ブドウの房の茎をひねり樹液を止めたり、手摘みしたブドウを天日干しすることで、ブドウの水分量を減らし糖度を高め貴腐菌の発生を促します。醸造中に補糖は一切行いません。独自の手法と自然の糖分により、特有の個性を持った極甘口ワインが造られます。
彼らが所有する畑の中で最も特徴的なのは「ボンヌゾー・クロ・デ・メレレス」です。他の畑は主に片岩土壌ですが、この南向き急斜面の区画にはフタナイト(石英を多く含む青く縞模様の岩石)の層が露出しています。この区画からは桃やアプリコットのコンフィなど、力強く濃厚なアロマを持つ、究極の極甘口ワインが誕生します。