シャトー・ピュエシュ・ルドンの歩み

「シャトー・ピュエシュ・ルドン」は、1955年にマルク・キュシュとマグダレーヌ・ラファイ・ド・ミショー夫妻がセヴェンヌ山麓の400ヘクタールの広大な土地に設立した家族経営のドメーヌです。夫妻の息子や孫の世代が畑を整備し、ブドウ栽培とオリーブ園の基礎を築いてきました。
2004年には孫世代の現当主シリル・キュシュの指導により、ドメーヌ全体を有機農業に全面転換し、2008年にはフランスの有機認証「AB(エコセール)」を取得しました。
さらに2015年にはシリルの主導で自然派ワインへの転換を進め、醸造工程においても市販酵母や添加物を最小限に抑え、テロワールの個性を忠実に表現するワイン造りを徹底しています。自家栽培したブドウを自ら醸造・瓶詰めし、テロワールの個性を最大限に引き出します。自然な発酵と熟成を通じて複雑で多彩な香りと味わいを感じられるワインを生み出しています。また、オリーブ園も管理しており、ワインだけでなくオリーブオイルの生産も手がけています。
2024年には曾孫世代のエリオット・キュシュ(シリルの甥)が加わり、カナダやトスカーナでのワイン造りの経験を生かして新しい視点やアイデアを導入。一族の伝統を尊重しつつ、品質と個性にこだわったワイン造りをさらに進化させています。
自然とテロワールを生かすワイン造り

シャトー・ピュエシュ・ルドンでは、ブドウの自然な抵抗力を高めるために、堆肥やハーブ、植物エキス、微生物を取り入れています。これらはバイオダイナミック農法に着想を得た手法で、土壌やブドウ樹の健康を整え、微生物の活動を活発にします。その結果、健全な畑を保ちつつ、ブドウの力強い味わいやテロワールの個性を最大限に引き出すことができます。
土壌の微生物や畑の動植物はすべて、健全な環境を守るうえで欠かせない存在です。ドメーヌでは40年以上にわたり養蜂箱を設置し、蜂たちが静かに花粉を運ぶことで、この土地の生態系のバランスを支えています。人の手は添えるだけで押し付けず、土地の自然な力を尊重しながら、ブドウ栽培と醸造を行っています。
彼らは自然な発酵と熟成を通じてテロワールの個性を最大限に引き出し、果実味だけでなくハーブやミネラルなど多彩な香りと味わいを生み出します。一本のボトルを通じて、この土地の生命力と魅力を伝えること。それこそが、彼らのワイン造りの根幹です。
土地が育むブドウの個性

シャトー・ピュエシュ・ルドンの畑は、石灰質を含む砂粘土土壌に位置し、低木が茂る乾燥したガリーグの裾野に広がっています。ガリーグ(garrigue)とは、南フランスの乾燥した土地に自生するハーブや低木が密集した独特の植生で、ブドウに微かなハーブ香や土地の個性を与えます。水はけがよく栄養分の少ない土地は、ブドウに緊張感と精密さを与え、凝縮感のある果実味豊かなワインを育みます。
彼らは畑の観察を通して、必要最小限の手入れにとどめ、土壌の生命力や生物多様性を尊重しながら、ブドウとテロワール、人間が調和する自然な共生を大切にしています。