サン・テステフに息づく小さな職人の情熱


著名シャトーが軒を連ねるサン・テステフ村の片隅にひっそりと佇む、家族経営の小さな造り手です。100ha以上の畑を持つ造り手が多いボルドーにおいて、彼らの所有畑は0.6ha、年間生産本数は僅か4,500本程です。まさにボルドーのガレージワインと呼ぶにふさわしい造り手ですが、細やかな手仕事で良質なワインを造り出しています。
シャトー・リノは1930年代に僅か0.1haから始まりました。現当主のヨハン・ジュスト(Yohan Juste)は、MOF(国家最優秀職人章)を授与されたフランスを代表する木工職人ですが、2009年に祖父が亡くなった事をきっかけにシャトーを引き継ぎ、2014年には隣接する大叔父の畑を借り受けて所有畑を0.6haに拡大しました。また、古い厩舎を改築して最新の醸造設備も備えました。シャトー名に使われている「リノ」は、ヨハンが幼い頃、祖父の畑に“リノット”と呼ばれる小さな鳴き鳥を度々見に訪れていた、という思い出に由来しています。
シャトー・コス・デス・トゥルネルの畑に隣接した畑は、表土に砂利を含む粘土質で、日当たりにも恵まれブドウが十分に熟します。職人らしい緻密な醸造により、豊かなタンニンを滑らか且つエレガントに仕上げたワインは、長期熟成が可能ながらも、若いうちからも楽しめるワインに仕上がっています。