最注目産地「コトー・デュ・ヴィトリア」


コート・デ・ブランから南東へ50km程に位置するシャンパーニュ産地「コトー・デュ・ヴィトリア(Cote du Vitryats)」。他のシャンパーニュ産地からは、飛び地になっており、一般的にはフランス国内でもまだあまり知られていない産地ですが、世界のシャンパーニュ専門家から、近年最も熱い視線が注がれている産地です。シャンパーニュ最小産地で、畑の総面積は480ha程。これはAOCシャンパーニュ全体の僅か1.5%にしか過ぎません。植えられている品種は97%がシャルドネで、コート・デ・ブランと同じくブラン・ド・ブランが中心の産地です。260を超えるブドウ生産者がいますが、多くの造り手は育てたブドウを共同組合や大手シャンパーニュ・メゾンへ販売しています。
シャンパーニュ・ロストは、「コトー・デュ・ヴィトリア」を構成する15村の一つバシュエ(Bassuet)に、1970年に設立された家族経営のドメーヌです。15haの自社畑を所有し、栽培から瓶詰・熟成までを自ら行っています。彼らのシャンパーニュの評価は高く、2022年の世界のシャルドネ種を集めたコンクール「メイユール・シャルドネ・デュ・モンド(Meilleurs Chardonnays du Monde)」では金賞を獲得すると同時に、出品された2,280本のシャルドネの中からトップ10にも選出され大きな話題となりました。まさにこの地域を代表する造り手です。
栽培面積の97%がシャルドネ


シャンパーニュ・ロストの所有畑は、バシュエ村を中心に全てコトー・デュ・ヴィトリアにあります。この地域はシャルドネを多く栽培していますが、コート・デ・ブランとは異なる個性を持つシャンパーニュに仕上がります。
コート・デュ・ヴィトリア周辺は、浸食により丸みを帯びたなだらかな丘が点在していて、その丘の東や南向きの日当たりの良い斜面を中心にブドウが植えられています。土壌はコート・デ・ブランと同様に熱帯の浅い海がパリ盆地を覆っていた白亜紀(9,000万~6,500万年前)のチョーク質ですが、そこに若干の泥灰土が含まれています。味わいは柑橘系果実に加えて、マンゴーやパッションフルーツなどの南国系果実のアロマが特徴的です。コート・デ・ブランのシャルドネよりも、華やかで、重さや硬さの少ない口当たりの良いシャンパーニュに仕上がります。大手メゾンシャンパーニュも、コトー・デュ・ヴィトリアのシャルドネを好んでアッサンブラージュに使用しています。
畑の平均樹齢は35~40年。定期的にブドウの木を植え替えており、新しく植え替えた区画の樹齢は約15年。「レ・ロージュ・パルセレール・キュヴェ」のブドウの樹齢は一番古く、約55年です。
羊の放牧でブドウ畑を守る


シャンパーニュ・ロストの三代目当主クレモンは、家族経営のメゾンを発展させていく為に、新しい取り組みにも積極的です。2021年にはHVE認証(Haute Valeur Environnementale、環境価値重視認証)を取得し、サスティナブルなワイン造りに取り組んでいます。また、休耕期の畑では羊の放牧を始めました。羊達は余分な雑草を食べながら、程よく畑を耕してくれます。また羊の排泄物は自然の堆肥として土へ還す事が出来ます。
現在はステンレス及び木製の大樽での熟成が中心ですが、アルゴンヌ産のバリック樽での熟成にも挑戦しており今後のリリースに期待が寄せられています。